エジプトとギリシャに旅行に行った時のお話です。カイロから空路ルクソールへ行き、 カルナック神殿、ルクソール神殿、王家の谷なんかを観光した後、再びルクソールからカ イロに戻るが、この時寝台列車を利用した。これがこのツアーの目玉の一つでもある。し かし、その寝台列車がすべての悪夢の始まりだった。ルクソール駅で夕刻に寝台列車に乗 り込んだ。ドイツ製の、エジプトにしては高級な列車だ。乗りこんで程なく夕食が運ばれ てきた。折角なのでエジプトで唯一?飲めるビール、ステラビールを注文する。やけにぬ るいビールがやってきた。仕方が無いので我慢して飲み、食事を食べた。食事もあまり口 に合わなくてはっきり言って美味しく無い。キャベツのサラダみたいなやつはなんか酸っ ぱい味がするし。 このキャベツがいけなかったのか、ぬるいビールのためか、それとも灼熱の観光地を歩 いた疲れのせいか? 夕食後しばらく経ってから、私は激しい下痢に見舞われた。コンパ ートメントとトイレとの往復を繰り返す。ドイツ製の列車と言う割には車体は結構ガタガ タと激しく揺れる。線路の状態が悪いのだろうか? 列車の揺れと下痢とでほとんど眠れ なかった私は、気持悪さを加えて最悪の状態に陥っていた。 朝、列車は予定通りカイロに到着し、バスに乗ってギザの三大ピラミッドに向かう。世 界最大を誇るクフ王のピラミッドにだけはどうしても入ってみたいと思っていた私は、頑 張って力を出してバスから降りていった。クフ王のピラミッドの中に入り、大広間までは なんとか辿りついた。大広間の下からとても傾斜のきつい通路と高い天井を見ていたら、 急にまた気持悪くなり、玄室へのアプローチは断念せざるを得なかった。先にバスに戻っ てますと告げた私は一人ピラミッドの外に出た。又お腹が痛くなってきた。仕方が無いの でトイレを探す。ピラミッドの入り口の面の左の面の横にボロそうなトイレがあった。例 によってトイレの番人が立っている。私は背に腹は変えられない状態だったので番人に破 格のチップを渡し、Don't knock!と言い渡した。チップが安いとすぐにノックされちゃう のだ。そのトイレはひどいものだった。一応水洗トイレだが、水はろくろく流れない。ド アには鍵が付いていた痕跡が有るが、痕跡しか無い。つまり、鍵が付いていない。仕方が 無いので片方の手でドアを押さえ、誰も入ってくるなよぉと祈りながら用を足した。想像 すると結構笑える構図である。 その後の観光も悲惨なものだった。予定ではお昼にハト料理を食べる事になっていたが、 そんなもん食べられるわけが無い。脱水症状にならないように、紅茶とミネラルウォータ ーだけをひたすら飲んでいた。って言うか、それしか喉を通らなかった。その後の細かい 旅程は忘れたが、体の状態が回復しないまま、カイロからギリシャのアテネに向かう事に なっていた。カイロ空港の待合室で待っていたら、どうやらアテネ行きの飛行機は大幅に 遅れるらしい。待合室で椅子に座っていたが、気持悪くて我慢できない。仕方が無いので 空港内の医務室に連れていってもらい診察してもらった。怪しげな(そう見えた)医者は、 ただの風邪だと言っているらしい。嘘だろう?食中毒だよ。と、思いつつも反論できない ので取り敢えず下痢止めの薬をもらって服用した。飛行機が飛ぶまでしばらくベッドで休 んでいろと言われる。案内されたところは、なんとカイロ空港のビップルームだった。空 港内の、何となく汗のすえたような臭いのする空気とは違い、そこはフカフカの絨毯の敷 かれた別世界だった。ああ、健康な状態でこの部屋に入れたらどんなに幸せだった事か。 しかし、私はひたすら下痢に耐えてベッドに横になっているか、トイレに座っているかの どちらかだった。しばらくベットでうとうとしていると、飛行機が飛ぶとの事で迎えが来 た。つかの間のビップ?体験だった。 エジプトの映像を見たり、アラビア語を見たり、ステラビールの星のついたラベルを見 たりすると、私はいつもあの時の辛さを思い出し、何となくお腹が痛くなるような気がす る。私特有のエジプトシンドロームだ。 ああ、幻のクフ王の玄室を見てみたい! ビップルームに入れたのは幸福だったのか、 それとも不幸だったのか? とにかく、貴重な体験をした事には間違いない。
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