「テカテに沈む夕日」

 エンセナーダを後にしてわれわれの車は帰路についた。往路と同じ道を帰るのもつまら
ないので、ちょっと内陸部を通りやはり国境の町テカテに抜け、そこからアメリカに入国
することにした。テカテと言うのは、知る人ぞ知る、メキシコではとても有名なテカテビ
ールを醸造している町だ。

テカテに向かう道は結構起伏の激しい山の中を通っている。山と言っても日本の山の様に
木が生えているわけでもなく、ゴツゴツとした岩の大地に背の低い植物が張り付いている
といった風景だ。メキシコの荒野と言ったら、いわゆる人の形をしたような背の高いサボ
テンが沢山生えているのかと思っていたが、それはメキシコでも限られた地域の話らしい。
密かにこんな光景を思い描いていた私の期待は見事に裏切られた。

 かなり長い時間をかけて、車はようやくテカテの町に到着した。夕方近く、太陽は西に
だいぶ傾いている。ドライバーの休憩と、間もなく別れを告げるメキシコへの郷愁をもう
少し味わうため、そして何よりも乾いた喉を本場のテカテビールで潤すために、我々は店
に立ち寄った。その店は道路に面したちょっとした広場に、テカテビールのロゴのついた
パラソルを広げて外で飲み物を飲ませていた。私は迷うことなくテカテビールを注文する。

 すぐにテカテビールが缶のまま運ばれてきた。缶のふちにはメキシコ・レモン(レモン
って言うよりライムみたいな感じ)を搾り、塩がふってある。これがメキシコ流正しいビ
ールの飲み方だそうだ。メキシコで醸造されるビールはテカテビールにしろ、コロナビー
ルにしろ、かなり薄味で淡白なので、レモンと塩でアクセントをつけて飲むらしい。更に
刺激を求めるメキシカンになると、缶の中に塩をサラサラそそぎ、缶の口を親指で押さえ
て逆さにして、塩の刺激で炭酸を出し、親指に圧力を感じた限界で缶を自分の口に持って
いき、吹き出してくるビールを受け止めるそうだ。確かに、そのまま飲んだら味気ない。
郷に入ったら郷に従えと言う事だろう。アメリカでもメキシコ料理の店でメキシコのビー
ルを頼むと瓶のふちに小さなライムをはさんでサーブされる。一口だけ飲んだ後、迷わず
ライムを搾り、グリグリと瓶を揺らして混ぜてから飲みましょう。淡白なビールも工夫次
第で色々と楽しめます。バドワイザーの様なアメリカンラガータイプのビールなんかもこ
んな感じで飲むと意外と美味しいんじゃないかと思います。ライムでも、レモンでも、酢
橘でも、柚子でもちょっと刺激の強い柑橘系果汁を搾り、塩をふって飲むと美味しいんじ
ゃないかな? 日本の各社の発泡酒でも結構いけるかも知れません。是非試してみて、結
果を教えてください。(実は著者は試していません。^^ゞ)

 さて、夕日を浴びながらのんびりとしていた我々は、太陽が落ちたのを合図にしてメキ
シコを後にした。メキシコの広大な国土からするとほんのちょっとかすったようなメキシ
コの旅だったが、結構雰囲気を味わえた。次に機会があれば是非、例のサボテンが林立す
る中でビールやテキーラを飲んだり、マヤの遺跡を見ながら一杯やったりしてみたい。と
ころで、マヤ人って言うのはお酒を飲んでいたのだろうか? 時間が合ったら調べて報告
します。もし知って入る人がいたら教えてください。


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