泡盛の独特の香りを楽しみながら口にすると、沖縄の夏が思い浮かぶ。こんな光景だ。 真夏の容赦なく降り注ぐ強い沖縄の日差し。泡盛の瓶とちょっとしたつまみを抱えて汗 を流しながら海の見える高台に登る。海の良く見える木陰に腰掛け、泡盛を瓶から直接湯 呑みに注ぎ、ひとり静かに飲む。セミの声が降り、空は抜けるように青い。 泡盛は、近くの蒸留所で甕から直接分けてもらった50年物の古酒(クースー)だ。 アルコールが口にカーっと広がるが、50年の歳月がそれをやさしく包み込む。暑さを忘 れ、しばし海から吹く風に身を任せる。時の流れを忘れ、安らぎが私を包み込む。 いつしか私はまどろみ、風景の一部と化す。 実際には私は50年物のクースーなんか飲んだ事はないし、そもそも沖縄自体に行った ことが無い。でも、何故かこんな風景が頭に浮かび、心は空想に遊ぶ。 こんな気持良い体験をするにはちょっとしたコツがある。まず、当然ながら泡盛を用意 する。アルコール度数は35度くらいで、やはり古酒が良い。私の場合は近所の酒屋さん で甕から量り売りで300mlくらいずつ買ってくる3年古酒だ。これを瓶ごと冷凍庫で 2時間以上冷やす。凍ってしまわないかと心配だろうが、アルコール度数が高い為に凍る 事は無いのでずっと冷凍庫に入れっぱなしで構わない。タンブラーも冷凍庫で30分くら い冷やし、氷を入れ、冷えてちょっとトロっとなった泡盛をそそぎ、クイッっといく。泡 盛の独特の香りとほんのりとした甘味が心地よい。 飲むならやっぱりギラギラの真夏の昼間、簾でも下ろした縁側で外の景色を眺めながら 悠長に飲むのが理想。だが、実際には軒先に葦簾(よしず)を張り、小さな縁台を出し、 隣の家の壁の前にある猫の額のような庭を前に飲んでいる。風流とは程遠い。でも、それ で良いのだ。目をつぶり、セミの声に耳を傾け、肌に風を感じれば心は沖縄に旅立ってい るのだから。 いつの日か、本当に沖縄で飲んでみたい。
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