3月の中旬の頃だったと思う。シリコンバレーの拠点に中期出張していた私は、休暇を 利用してメキシコとの国境の都市サンディエゴに出向いた。現地駐在員のK氏に色々と案 内していただく。サンディエゴを訪れる我社の出張者は、通常サンディエゴとメキシコ側 国境の町ティワナを案内してもらうのを常としていた。ティワナの話しは大勢の人から聞 いていたし、今後も機会があるだろうと思い、私はK氏に無理を言って別メキシコを見せ てくれるようお願いした。それではと言ってK氏が案内してくれたのは、国境を越えて百 数十キロ程南下した太平洋に面したエンセナーダという町の海岸だった。海がとてもきれ いな所だ。 K氏の車でメキシコ国境の検問所を越える。パスポートをちらっと見せてそのまま車で 通過するだけの拍子抜けするように簡単な審査だ。有料道路の料金所って感じ。ティワナ の町を抜け、車は海が見える海岸の道路を南下する。海岸沿には赤茶けたような家々が並 んでおり、それらの家々からはやはり赤茶けた傘の骨組みのようなパラボラアンテナが出 ていてとても目立つ。ちょっと変わった風景だ。あのパラボラアンテナでテレビの電波を 受け止めているのだろうか? エンセナーダに到着し、ちょっと町中を散策する。なんとなく古めかしいような、懐か しいような雑然としたたたずまいだ。目的も無くぶらぶらしていると、貧しそうな母子が 物乞いをしてくる。かわいそうだと思いながらも、相手をしているときりがないとの事な ので視線を合わせないようにする。やはりメキシコは貧しい国なのだ。 町中を散策した後、海岸の観光地に行った。波が岩の間から吹き出すのが呼び物の観光 地だった。駐車場から岩場へと向かう道の両側にはバラック小屋のお土産屋さんが並んで いる。適当に冷やかして駐車場に戻り、お腹が空いたのでお昼を食べに行く事にした。行 ったのは、海の見える小さなレストラン。周りには他に家も無く、ポツリと一軒建ってい る。店の外にちょっとしたテラスがあり、そこで食事が出来そうだ。お世辞にもきれいな 店とは言いがたい。客も私達だけだ。天気が良かったのでテラスで食事をとる事にして、 ロブスターとマルガリータを注文する。3月だと言うのに日差しが強く、まるで真夏のよ うだ。ほどなく注文した料理がやってきた。暑かったのでまずフローズンマルガリータを ぐいっといく。テキーラがきいてて喉にしみる。これが旨い!ロブスターも小ぶりだが身 が締まっていてまずまずだ。強い日差しのもと、美しい風景を見ながらマルガリータを飲 み干す。もう一杯お代わりを頼んだ。マルガリータにはこんな日差しと風景が良く似合う。 以来、マルガリータを飲むとこんな光景がよみがえる。このレストランでしばらくのんび りした後、我々はエンセナーダを後にした。 ところで、マルガリータのベースとなるテキーラは何から出来てるかご存知ですか? 私は昔、テキーラはサボテンから出来ていると聞いたような気がして、つい最近までずっ とあの人の形をしたのっぽなサボテンから出来るものだとばかり思っていました。実際に はテキーラは、アガベ・アスール・テキラーナという竜舌蘭の一種を原料として造られて います。竜舌蘭はアロエを大きくしたような形の根生植物で背の高さが1メートル程の植 物です。放射状に棘のついた肉厚の葉が伸びています。テキーラを造る時は、この竜舌蘭 の葉の部分を根元から棒の先に平らな刃の付いた道具で切り取り、葉の部分ではなく後に 残されたバスケットボールを一回り大きくしたような根の部分を使用します。この根っこ の部分はきっと甘いんでしょうね。これを砕いて醗酵させ、蒸留するとテキーラの出来あ がりと言うわけです。ちなみにテキーラと言う名前はこのお酒を造るテキーラ村から来て います。
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